「お母さん、産んでくれて有り難う」
「私、一人になっちゃうやん・・・だけど、だけど・・・
お母さん、産んでくれてありがとう。私、幸せになります。家族をつくります。」
一人娘のAさんは、棺にすがりついて泣き崩れた。胡蝶蘭、カサブランカ、カーネーション・・・たくさんの花の中に穏やかなEさんの顔
「そんなに泣かないで!! 見守っているよ!!」と言ってるような本当にやさしい顔。
Eさんは、娘さんが中学の頃から、台所で家事の合間にビールを毎日飲むようになったとの事。キッチンドリンカー。そして、その量は、いつしか限度を超えるようになった。アルコール依存症。ついには、脳の萎縮に及び、コルサコフ症候群に・・・
娘さんは、Eさんの面会時、涙ながらによく私に話されていた。
「学校の帰り道、今日のお母さんは、やさしいかな?それとも怖いかな?」といつも思ってた。お母さんが、コルサコフ症候群という病気になっているなんて知らなかったから・・
~あんたなんか産まれてこなければよかった!~って言われた時、辛くて辛くて、死んでしまいたかった。
でも、この施設に来て、ここ数ヶ月。私の事を解ってくれているのかどうかも定かでなくなってしまったけど、穏やかになってくれた。それが、一番嬉しい。皆さんのおかげです。本当に有り難うございました。」
葬儀が終わった時、娘さんが私に話してくれました。
私は、ケアマネになってから、自分の担当の方の葬儀には、可能な限り参列させて頂いている。終末期に、少なからず一緒に人生設計図を考えさせて頂くのがケアマネであるとするなら、その最期の時を見とどけ、お送りしたいと思うから・・・
最期のこの時に、「この施設に来てよかった。本当に有り難うございます。」なんて言って頂く・・・ありがたくて、ありがたくて、涙が溢れてくる。
10人いれば、10の人生がある。そして、人生の終の棲家として私達の施設にこられる利用者様の様々な人生の最期を少しでも穏やかな時にするお手伝い・・・
私は、ケアマネとして、この弘済院第1特養の職員と共に、これからも真摯にとりくんでいきたい。